日常〜ファストフード店での、小さな「お医者さん」との出会い〜
ファストフードに行った時のことだ。
隣のグループ掛けの席に、色鮮やかな衣装をまとった女性二人とその連れ合いの男性二人、そしていずれかのカップルの子供と思われる小学低学年の少年が座った。聞こえてくるのは大人たちの(多分に)ネパール語での会話であった。文末ごとにしり上がり気味になるその言語が耳に心地よく、それをBGMとして聞きながら、私はと言えば、今運ばれてきたポテトにケチャップをつけてもらうのを忘れたことだけが気になって、もう一度レジに行こうかどうか、そわそわしていた。だがふと気が付くと、聞こえてくるBGMのネパール語のあいだに時折子供らしい日本語が聞こえてくる。はて・・・と思い、注意して聞いてみると、隣の少年が大人たちのネパール語での問いに全て日本語で答えている。
「◎△$♪×¥? ◎△ヴ×¥? #$%?」(←ネパール語)
「うん、そうだよ。でもわかんない。」
「~==&%$#$%&’()%%&‘$#“?」(←ネパール語)
「わかんないってば!・・・・これ見て。じゃーん!」
親たちの問いはどうでもいいといった様子でゴジラのおもちゃを動かして見せている。
この人たちは明らかにバイリンガルであり、この少年は完全にネパール語と日本語のネイティブスピーカーであろう。
(バイリンガルというのはアクセントや訛りがあったり、文法など完全ではなくても意思疎通できる人たちのことを言い、ネイティブスピーカーとは母国語として言語を使える人のことを言う。)
少年があまりにも無邪気でかわいいので、彼らが立ち去ろうとするとき、私の日頃の「かまいたがり癖」が出てしまった。
「ねえ、いいの持ってるねえ。」とゴジラを指して少年に言ってみると、
「触っていいよ!」と、嬉々として私の手にゴジラを渡してくれた。
ところが!手渡されたゴジラを動かそうと思った瞬間、あろうことか、ゴジラの腕が取れてしまった!
「ごめん・・・、おばちゃん壊しちゃった・・・。」と、なんとか片腕をくっつけようしていると、その少年は、何食わぬ顔で、
「壊してないよ。ほら!」と言ってゴジラのとれた腕を肩のくぼみに上手に入れてみせてくれた。
「すごいねえ。お医者さんだね。」と照れながらいう私に、
くりくりとまんまるい目が笑っていた。
大人たちは私に向かって「すみません。」と軽く会釈をしてほほ笑み、
少年はゴジラを手に、後をついていく。何か別のことでも考え付いたらしく、もう私のことなど眼中にない。
何ら変わらぬ日常がそこにあった。
私はただのおせっかいなおばちゃんで、
たまたま若夫婦の一組にかわいい子供がいて
些細な会話がそこにあっただけだった。
おだやかな瞬間が流れていく。
これからもそんな瞬間が幾多となく流れていってほしい。




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